悩み所、勘所。−日本版内部統制“成功”の秘訣

 著者は米国SOX法該当のキヤノンで、IT全般統制の実務に携わり、内部統制「有効」を外部監査人から勝ち得た、数少ない内部統制のフル実務担当者。本著はそんな著者がSOX法対応の実務の中での、悩み所、勘所をポイントとして紹介しながら、一連の内部統制監査の評価手順を示してくれたもの。
 通読して、以下の人たちに読んでおいてもらいたい良書と言える。(そもそも以下に該当しない人がこの本を手にとるのだろうか。。)

1.内部監査人・内部統制担当者(内部担当者)として、J−SOXに関わる人
2.外部監査人として、内部担当者と関わる人

 それぞれにおいて、どのような読むポイントがあるのかだが、まず内部担当者としては以下2点があげられる。
1−1)J−SOXの一連のプロセスがまとまっている
 とくに期末アップデートまでの評価手順が記載されているので、有効ゴールへの道筋、ゴールの場所・その姿を知ることができる。これはいくべき道筋に悩む担当の方々へ、よい道標となると思う。
1−2)内部担当者として、実施上で悩んだポイントがわかる
 本書によると大きく以下3つ。
I.評価範囲の決定
II.デザインの評価(リスクを適切に低減しているかの判断)
III.証跡の必要性のレベル(全ての承認に判子がいるのか?)

 次に、外部監査人としての読むポイントは、

2−1)上記と同様、外部監査人として内部担当者が実務において何に悩んでいるのかを知ることができることにある。
 外部監査人と内部担当者との温度差は、そのまま上記の悩んだポイントであり、ここは今後各社の内部担当者と、論点になるところと予想される。そのような論点をあらかじめ把握ができ、準備として自分の判断基準も準備しておける。

 個人的には、外部監査人として往査時に、配って歩きたい本と言っても過言ではない。「担当者の方はこういう所を悩んでるんですよねー。わかりますわ〜。」「内部統制評価プロセスのゴールはここなんですよー。」「お互いここ目指してやっていきましょうね。」こんな感じで。